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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)962号 判決 1954年12月07日

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人芦野藤夫の負担とする。

理由

被告人奥山弘、同加藤惣治、同羽柴末吉、同岩月助三、同長瀬庄八、同奥山高三、同伊藤礼太郎、同安達茂雄、同三浦久の各上告趣意及び被告人芦野藤夫の弁護人小田泰三の上告趣意は、末尾の書面記載のとおりである。

被告人奥山弘外八名の上告趣意について。

所論は、いずれも事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人芦野藤夫の弁護人小田泰三の上告趣意第一点について。

公職選挙法二二一条一項五号と内容を同じくする旧衆議院議員選挙法一一二条一項五号にいわゆる選挙運動者には、法定の選挙運動者及び無届選挙運動者のみならず金銭を供与せんとする者の意を受けその目的を知りながら被供与者に伝達するため金銭の交付を受ける者をも包含することは、つとに大審院の判例(昭和一一年(れ)二二五二号同一二年一月三〇日第三刑事部判決、刑集一六巻一七頁、昭和一一年(れ)一七三七号同年一〇月五日第二刑事部判決、刑集一五巻一二五八頁)としたところであって、公職選挙法二二一条一項五号の解釈としても、いまにわかに右大審院判決の見解と異なる解釈をしなければならないものとは思われない。ところで、原判決の確定した事実によれば、被告人芦野藤夫は昭和二七年一〇月一日施行の衆議院議員選挙に際し選挙人であったところ、同年九月一六日頃肩書自宅で山形県第二区から立候補した池田正之輔の選挙運動者伊豆倉精治から父芦野六兵エに対し右候補者に当選を得しめるため投票並びに投票取纏めをすることの報酬として渡して貰いたい旨の依頼を受け、その資金として金二千円の交付を受けたものであるというのであって、右判示事実自体により被告人が前記判例にいう選挙運動者に該当することが示されている。それゆえ、原判決が右事実に公職選挙法二二一条一項五号を適用処断したからとて、所論のように被告人が選挙運動者であったことを判示しないで処断したものではないから、所論当裁判所の判決に違背するところはなく、また理由不備の違法もない。

同第二点について。

被告人芦野藤夫が論旨第一点で判示した趣旨の選挙運動者と認められることは、原判決挙示の証拠により肯認することができる。そして、同被告人の原判示行為が公職選挙法二二一条一項五号に該当することは第一点において説明したとおりであるから、所論違憲の主張はその前提を欠き問題とならない。

なお、本件には刑訴四一一条を適用すべき事由も認められない。

よって、刑訴四一四条、三九六条、一八一条に従い、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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